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ハクヤ自身は見たことはないが、そのヤギは相当の美しさを持っているようだった。
ハクヤも、それほど美しいヤギならば、一目でも見てみたいと思う。
しかし、あまり乗り気にはなれないでいた。
自分のために、誰かを犠牲にするなんて・・・
(・・・何を考えているんだ。俺は、偽物でもオオカミだぞ)
今までだって己のために、他の命を消費させてきた。
今更、何を怯えるのか、とハクヤは自らの心に疑問を持った。
水面に映るものを、見る。
白の髪と、紫の瞳。
嫌いな二つの色が並んでいた。
その二つと、耳を隠すように、フードを被る。
紫の瞳も白の髪も、隠れることは出来なくて苛立ったが、取り敢えず耳を隠すことは出来たようだった。
聴覚が鈍ることは、とても恐ろしいことだったが、オオカミの皆に認められるため、と我慢した。
「・・・さっさと終わらして帰ろう」
視界に入る、白に不快感を覚えながらも、ハクヤはヤギの集落へと足を踏み出した。
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