白き狼、太陽の下で

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扉が突然に開いたのだ。 手は空を掴み、おでこに扉の角がぶつかった。 「ぎゃあ!!」 「あ、ごめんなさい!」 踞るハクヤの頭上から、声が聞こえた。 その声の持ち主は、慌ただしく走りだしたかと思うと、 家の中から持ち出した、冷えたタオルをハクヤのおでこに充てた。 「冷たい・・・」 「ごめんなさいね・・・傷は出来てない?」 タオルを受け取り、大丈夫と言おうと、顔を上げた。 「・・・・・・」 声が、出ない。 それは決して、フードを被っているから聞こえなかった訳ではなかった。 顔を上げた先には、美しいヤギが立っていた。 白く滑らかな肌。 水のように静かで、透き通った青の瞳。 整った顔立ちに、女神のような笑顔を浮かべている。 (綺麗・・・) つい、見惚れてしまい、言葉を失った。
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