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渡されたタオルを握り締めた。
冷えていたタオルは、すっかり温くなってしまっていた。
「・・・やっぱり、痛かった?」
表情を変えたハクヤに、心配そうに声を掛ける。
「・・・すみません。何でも、無いです・・・」
少し、表情を和らげ、言葉を返す。
しかし、心は未だ迷ったままで。
「あ。ここに来たのって、私に用があったのかしら?」
「・・・まあ、そうですね」
殺しに来た、などとは言える筈もない。
「ごめんなさいね。私、今から家を出る所なの。すぐに戻るから、家で待っててくれない?」
「・・・はい?」
ハクヤの迷いや考えは、その言葉に吹き飛ばされてしまう。
それは、そうだろう。
ヤギがオオカミを家に招くなんて。
嬉しい気持ちやら、不安な気持ちやらで、ハクヤは顔色を赤くしたり、青くしたりした。
「あら、こんな時間・・・。ごめんなさい、行って来ます!!」
ソーラは、そう言い残し、走っていってしまった。
その後ろ姿をただ呆然と、眺めるハクヤ。
ほんの数分間に起きた、この出来事により、ハクヤの未来は、大きく揺れ動く事となった。
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