白き狼、太陽の下で

9/10
前へ
/10ページ
次へ
渡されたタオルを握り締めた。 冷えていたタオルは、すっかり温くなってしまっていた。 「・・・やっぱり、痛かった?」 表情を変えたハクヤに、心配そうに声を掛ける。 「・・・すみません。何でも、無いです・・・」 少し、表情を和らげ、言葉を返す。 しかし、心は未だ迷ったままで。 「あ。ここに来たのって、私に用があったのかしら?」 「・・・まあ、そうですね」 殺しに来た、などとは言える筈もない。 「ごめんなさいね。私、今から家を出る所なの。すぐに戻るから、家で待っててくれない?」 「・・・はい?」 ハクヤの迷いや考えは、その言葉に吹き飛ばされてしまう。 それは、そうだろう。 ヤギがオオカミを家に招くなんて。 嬉しい気持ちやら、不安な気持ちやらで、ハクヤは顔色を赤くしたり、青くしたりした。 「あら、こんな時間・・・。ごめんなさい、行って来ます!!」 ソーラは、そう言い残し、走っていってしまった。 その後ろ姿をただ呆然と、眺めるハクヤ。 ほんの数分間に起きた、この出来事により、ハクヤの未来は、大きく揺れ動く事となった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加