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――10月……
初秋であるこの月に入って、やっと粘り強い暑さは撤退を決めたようだった。
空は白みを増し、風は時折強めにアスファルトをさらっていく。
ゆっくりと
時に急ぎ足で
起こる様々な事柄など全くお構いなしに
――流れる季節。
「ふぁ~あ……」
リビングのテーブルについた男は、思い切り腕を伸ばして大欠伸をした。
グレーのスウェットはパジャマなのだろう、どうやら起きぬけらしい。
もともと色素の薄い髪の毛は朝の光を弾いて柔らかく揺れる。
普段から『可愛い』と評される彼が、無造作に目を手の甲で擦っている様子は、まるで子供のようだ。
大きな茶褐色の瞳と、柔らかい栗色に近い色の髪。
幅広の口元はイタズラっ子の雰囲気を残している。
――相川慎太郎。24歳。
「んあ……新聞……」
シンは言いかけて、もう一度大きく欠伸をした後、半開きの目のままテーブルの上を見渡した。
「……あれ?愛、今日の新聞どこいった?」
言いながら、キョロキョロと首を巡らせているシンに、
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