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それに何より、自分の体が石のように重いことに気付いた瞬間。
もう2度と起き上がれないことも覚悟したものだ。
…だから……今のこの状態は奇跡に思える。
アメリカで3ヶ月間リハビリを受け、やっと日本に帰国。
ようやく日常生活に支障がない程度に回復しただけでも感謝だ。
全力疾走したりすることはまだ到底無理に違いないが、スポーツ選手でもないのだから不便は感じない。
後は実家の病院でリハビリを続けながら、研修をしていく予定で。
「やすみ」
双樹はやすみから少し体を離すと、彼女のパッチリとした瞳を覗き込む。
妊娠後期の影響で、もともと丸顔の彼女の頬は以前よりもふっくらとしていたが、それは妙に癒されるものだ。
「……辛い思いをさせて、本当に悪かった」
自分が意識を無くしていた間の彼女の苦しみを想像すると、双樹の胸は痛いほどに締め付けられる。
昔からずっと傍にいて、自分が守ってきた彼女。
そんな彼女を自分が苦しめる日が来るなんて、想像もしていなかったから。
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