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どこか遠くでカラスが鳴いていた。
よく見れば、茜色の空に黒い斑点のように群れたカラスたちが飛んでいた。彼らは地上の子供たちに「早く家に帰りなさい」と言っている。
刻はすでに夕暮れ、すぐに西に傾いた日は彼方へと沈んでしまう。そうなれば、そこはもう昼間のそれとはまったく異なるものと成り果てる。
日が照っている間は人のものであるが、日が沈んでいる間は人ならざる者のもの。
今はちょうど、その狭間にある。
故に、今はその両者が共に活動をしている時間帯でもある。
逢魔が時――人でない異形と出会う可能性が高い今を、年功を積んだ村の老人たちはそう呼んでいる。
だが、それでもまだ遊ぶ子供がいた。
カラスたちが飛んでいく方角、彼らの棲処である山。そこの頂上に近い場所。
誰も近寄ろうとしない祠があった。その目の前で、二人の少年少女が戯れている。
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