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どちらも古風な着物をまとっていた。少年は濃紺色でちゃんちゃんこを羽織っている。少女は、薄い桃色の小袖であった。
少年たちは見るからに幼い。彼らは鬼ごっこをしていた。
周りを林に囲まれたそう広くない祠の前を目いっぱいに走り回り、その走り方はまだよちよちといったところで見ていて危なっかしい。
しかし、ここには彼ら以外に人の姿はなかった。あどけない姿を見守るのは、先ほどから子供たちに家に帰るよう促すカラスしかいない。
時折、また一つ鳴いてはその子たちを諭しているようだ。
それでも、二人はカラスの声に耳を傾けず、時間が過ぎるのも忘れて駆け回る。
こんな山奥で、まるで隠れるようにして二人の子供は遊んでいた。
今が夕暮れ時だという事も忘れて――
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