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「章ちゃん行ってくんな。」
「おん。いってらっしゃい、亮。」
スーツに身を固めた亮に玄関先で行ってらっしゃいのちゅーをする。そして、笑顔で見送る。
それが僕がここ1年で身につけた習慣。
亮と付き合って2年、結婚して早1年。
亮は本当に優しいし、頼りになる旦那さんや。
常に支えてくれるし、僕のことも理解してくれている。いつも時間を作っては、一緒にいてくれる。
それは付き合っている時でもそうやったし、今でも変わらん。
元々、語学が堪能な亮は、海外を飛び回るバイヤーやった。
やから、付き合っていても、会える時間なんかあんまなかったっていうのが事実やねん。
やけど、結婚を機に亮は、企画部に転属を希望した。
本人は、「企画部の室長にならないかって話がきてん。この年で室長やなんて、大出世やで。」って言ってたけど、優しい亮のことや。極力、僕の側にいようと努力してくれたに違いない。
そんな優しい旦那さんと一緒になれた僕は、間違いなく幸せ者に違いない。
「さて、洗濯物片して、僕も仕事に行かなきゃ!!」
マンションを出ても、何度もこちらを振り返る亮に手を振っていたんやけど、彼の背中が路地に消えたのを確認してから、僕は再び家へと戻った。
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