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「錦戸章大、か。」 昔、俺と一緒にいた頃とは違う響きを持つ君の名前…。 さきほど、取引先で手に入れた章大の名刺を見ながら、カフェテラスでカプチーノを飲む。 目の前は桜並木。眺めもいいし、このカフェは俺のお気に入りの場所やねん。 桜を眺めながら街の風景に目を向ける。 お花見シーズンの町はどこもかしこも賑やかや。道行く人も心なしか浮かれている。 昨日までの俺ならそれを苦々しく思っていたやろうけど、今は違う。なんせずっと愛し続け、探していた人に再会出来てんから。 愛した人は他の奴のもんになってしまっていたけど、そんなことは問題やない。 そりゃ、俺しか知らなかった章大の体に俺以外の奴が触れたことを考えると、はらわたが煮え繰り返りそうになるけど、今はそんなこと言ってられへん。 奪われたら、取り返すまでや。このままでは終わらせられへん。 「そう簡単に諦められるような想いやないねん、これは…」 諦められるもんやない。恋だの愛だのという言葉で簡単に済ませられるものでもない。俺は君がいないと生きてけへんねん。 時間は充分ある。これから長期に渡って章大の会社と仕事をすることになるねんから。 焦る必要はない。じっくり外堀から埋めていこう。周りが気付いた頃には内堀まで埋められていた、それが理想や。 君が俺の元に帰ってくるんやったら…もう1度、君をこの腕で抱きしめることが出来るんやったら、俺は悪魔にでもなれる…。 .
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