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「章大!!」
打ち合わせが終わり、部屋を出たところで呼び止められた。
振り向かなくても分かる。
嫌ってほど、聞き覚えのある…懐かしい声、やもん。
それに、先に部屋を出た侯くんと渋やんはとろい僕を残してとっとと歩いて行ってしまったので、すでに廊下の角を曲がってしまった。
ここにいるのは、僕と…そして、彼、だけ。
振り向きたいけど、振り向いたらアカンような気がする。
過去はもう振り向かないって決めたやん。綺麗さっぱり忘れよう、って。
それやのに、今、振り向いてしまったら…。
「なぁ…なんで何も言わず、俺の前から姿消したん?」
そう決めたのに…聞こえてきた悲しげな、それでいて切なげな声を聞いてしまったら…僕はなんとも言えない、胸をぎゅーっと締め付けられるような痛みが走り…振り向いてしまった。
頭ん中では、煩いほど警鐘が鳴り響いていたのにね。危険や、って…。
それでも、僕は振り向いてしまってん。
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