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たたたた、と小走りの足音が近づいてくる。
化粧を終えた紗英が歩調を合わせながら俺の横を歩き始めた。
もうすぐ、開演の時間だ。俺は始めの盛り上げ見たいなものを演じる。
このコロッセオではかなり稼いでおり、ランクも上位とはいえ、流石に舞台に立つ前は緊張する。
そしてその体の強張りを増幅させるように紗英が一言、
「今日の対戦表、見てきたけど
柚月の相手、ランキング凄い高い人みたいだよ」
「そうか」
「……はぁー。柚月の反応ってことごとくつまんないっ。
なんかもっと愛想のある顔はできないのかねー」
不満げに唇を尖らせてみせる紗英に、俺はさながら作り笑いをして見せた。
でもどうせその顔もギクシャクひきつっていただろう。
あまりの緊張に心臓が高鳴る。
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