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控え室の扉を開くと、鏡の前でひとりの女が化粧をしていた。
紗英だ。偶然か否か、よく控え室で会う。
鏡に映った俺の姿に気付いたのか表情がぱっと明るくなる。
「あ、柚月!!おはよっ」
きいっと音を立てて椅子が回った。
化粧途中の顔でも充分かわいらしい。
「化粧なんかしたってどうせ血で汚れるんだぜ」
「だから、女の子はみんなの前に出るときは綺麗にしてなきゃいけないんだってば」
それに、と言いかけた紗英を睨みつけた。
いつでも相手に勝てるとは限らない。踏み違えればここが死に場所になる。
当たり前のことなのだけど。
「弱気になってたら本当に死ぬぞ?」
俺は荷物だけ置いて控え室を出た。
実際、控え室ですることなどさしてないのだ。
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