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「お前、名前は?
カード作らなアカンからさ、名字だけ言うて」
「藤原」
「フジワラね、ほらよ」
意外にも丁寧な字で書かれたカードを受け取り、店を出る間際に尋ねる
「お前何て言うん?」
「井本・・・井本貴史」
「貴ちゃんや」
「貴ちゃん言うなボケナス」
ボケナスて・・・
でも俺は見逃さんかったで
俺が今、貴ちゃんて呼んだとき顔を赤らめたの
ほんま、そういう反応がいちいち可愛い奴やな
「なぁ、ここの店はさ、テイクアウトとかできへんの?」
「テイクアウト?
物によると思うけど・・・なんで?」
「俺、お前んことテイクアウトしたいんやけど」
ちょっとキザっぽく、奴の耳元でそっと囁く
ニヤッと笑った井本は、
「俺、高いで?」
と言う
その言葉を合図にしたかのように俺は井本の手を引き、店の外に出る
「お前テイクアウト出来るんやったらナンボでも払ったるわ」
「ここ、そういう店ちゃうんやけどな」
お互いの顔を近づけ、俺たちはそっと唇を合わせた―――――
.end.
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