第10章

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俺は夢を見た。 暗い部屋で数人の男達に囲まれ、銃を向けられている。 ある男が口を開くが声が全く聞こえてこない。 話の内容が分からないまま事は進んでゆく。 だがなんとなくではあるが内容が分かる。 というより知っていると言った方が妥当だろう。 そして殴り合い、撃ち合い、倒れる。 そういう変な夢。 早く覚めろ。 目を開けると真っ白い天井が見えた。 どうやら横になっているみたいだ。 ベットの脇には規則的にピっと鳴る機械。 反対側には本部長。 その隣に涙ぐむ女性。 この女性には見覚えがある。 ………いや、そういう風に言うのは失礼か。 「…………薫」 自分でも驚く程声が出なかった。 だがなんとか絞りだした。 「こ、孝次さん」 足元には医者がいた。 「舘川さん、よかったですね。もう少しズレていたら即死でしたよ」 医者の言葉は耳には入ってこなかった。 薫が側に来て、泣き崩れる。 俺に覆いかぶさるように泣く。 そっと薫の肩に手を回す。 「すまないな」
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