ありふれた超能力

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しばらくして、視力測定を終えた三河は校門で一組の見慣れた男女を目にした。 真っ赤に染められた短髪、地肌の上にボタン全開の学ラン、ズボンに大量の細いチェーンを付けているいつも通りの服装の雲坂流儀がいる……土下座の状態で。 「……釈明」 少女が土下座をしている雲坂を見下しつつ、ボソリと呟く。 アジアンビューティな黒髪ロングと日本人離れした澄んだ碧眼を併せ持つ身長の低い少女だ。今現在、その瞳には怒りの炎が燃え盛っている。 恐る恐る顔を上げて雲坂は口を開く。大柄なはずなのに、やたら小さく見えるのは気のせいか。 「いやあのですね頼木様。マスターオブジェントルマンことわたくし雲坂流儀にはより多くの女性をエスコートするために世間一般の事を広く知る義務があるのでありまして。その一環で映画、文学、絵画、彫像などの数多くの芸術を愛でる事で自己の感性の修養を行っていますのでして。つまるところミロのビーナスから……」 明らかに慣れていないたどたどしい丁寧語から、雲坂が少女・頼木吹花に無礼をしたことが何となく伝わってくる。 そして碧眼の少女の視線は冷ややかだ。幼い顔立ちは絶対零度の無表情を形取っている。 「…………それで?」 その三文字に込められた殺意を受け取った瞬間、雲坂は立ち上がった。対等に話し合うためにではなく、いざという時に逃げるために。
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