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横断歩道のど真ん中で立ち止まるわけにはいかないから。
若干ふらつきながらも人がごった返す竹下通りの中へ足を進めた。
一度しか脈打ってないのに、あまりにも大きく脈打ったからか…胸が痛い。
つい、胸元の服をわしづかみしてしまう。
『あ、SAYさんこっちこっち!』
やけに明るく呑気な声が耳に入り、顔を上げたらナリが居て、店前に到着していた。
『やぁ~本当に来てくれるなんて思ってなかったよ。すっげえいい人だね、やっぱ!』
『…貸しだからな。今度こき使ってやる』
『んはは。いいよ、いいよ!SAYさんの為なら喜んで犬するし!』
きゃんきゃんと煩い。
『で、俺何すりゃいいの』
自分より低い位置にある金髪頭をワシワシ撫でてやると、嫌がるどころか嬉しそうに目を細めた。
『会計と在庫チェックお願いします。俺は接客担当するんで!』
『…あ、そ…』
別に正雇用されてないのに、ナリを通してたまに駆り出される。
もう、他のスタッフも正式雇用のバイトだと勘違いする奴まで居る程。
『…あれ…』
店内に入って、突き当たりの壁を見る。
壁掛け式のショーケースに入っていた商品がない。
在庫チェックしようとカウンター内に入りパソコンに手を掛けた。
『………売れたのか…』
『…え?何が?』
『あの、壁に掛けてたスカルの…』
ナリがカウンターに肘を置いて、パソコンを覗き込みながら俺の独り言を拾った。
『あぁルビーアイのやつ?ついさっき売れたよ』
『そっか…』
『何?欲しかったの?』
『…や、そういうわけじゃねぇけど…』
気にはなってた。
昔、自分が付けてたピンキーに近い作りだったし、なにより彼女を思い出す。
『なんかね、ほわわ~って感じの可愛い女の子だったよ。裏原宿への道とか聞いてきたから地方出なんかね』
『…へぇ…』
『……』
ナリが無言で俺を見つめてきた。
こいつが無言だと怖いな…
『…なに…?』
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