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「待って」
声に薫が振り向くと、小町は顔を蒸気させ、小走りで追いかけていた。
「ごめん!」
「ううん…大丈夫…」
軽く息を上げた小町を見て反省した。
母に悟られ、恥ずかしくなり、早く遠くに行きたかったのだ。
「太郎はさ…怖い犬じゃないんだよ?ただ、遊ぶのが好きで…きっと遊んで欲しかったんだ」
「でも…驚いた。前迄暮らしていた所は、みんな家の中で小さな動物を飼っている位だったから…」
「…どこから来たの?」
「都会よ。ずっと遠く」
「どうしてこんな不便な所に?」
「……もう、ここが家だから。」
小町の指す先は、ここ一帯の領主が、かつて住んでいた屋敷だった。
「ありがとう」
そう言って、小町は門扉を開き、中に消えた。
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