プロローグ

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「そのお話知ってるよ!」 青い芝生の敷き詰められた庭の片隅で、椅子に腰掛けた母親の膝にまとわりつく様に言った。 「小さな頃、母様に読んでもらったご本でしょ?」 フフッ と笑って、母親はその子を抱え膝の上に座らせた。 まだ7歳の男の子が『小さい頃』と、大人振って言ったのが可笑しくも有り、そして日々成長する我が子の姿を見るのがくすぐったかった。 「そうね。お話の続き覚えてる?」 「うん!えっとね。精霊さん達がやって来て神様達とケンカするんだ。それで、勝った神様にお願いされて、神様の代わりにエターリカを守るって約束するの!」 母親に抱かれてご機嫌な少年は、嬉しそうに話して聞かせた。 「そうよ。────だからあなたも母様に約束して……。精霊さん達のようにエターリカを護っていくって。自然を愛して、争いの無い世界を創っていくって………」 最後は涙声で言った母親に、少年は狼狽えた。 「母様?──母様どうしたの?泣かないで……」 母親の泣く姿に、哀しくなったのか泣き出した。 「お願いよ。護ってちょうだい………」 そんな我が子を抱き締め、何度も何度も呟いた───────
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