夏はじめ

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「ゆりえー!先いってるよ!」 私の馬鹿みたいに大きい呼びかけに周りは振り向くにも関わらず、百合枝はこちらを見る事無く片手を上げるそぶりで答えた。 二人で教室の外へと出ると、廊下はテストの終わった生徒達で賑わっていた。まだ夏休みまで10日ほど有るというのに皆既に夏休み気分だ。 実際、テスト返しやレクリエーション、夏休みの課題説明などであっという間に終わるのだが。 「夏休み、部活でんの?」 賑わいの中玄関口へと向かって歩く途中憲次が口を開く。 「んー、そこそこには」 そっかそっか、と憲次は頷く。 「ま、高校最後の夏休み、遊ぶのも大事だよな!」 予定、ないなーなんて思いながら同意を求めるキラキラとした眼差しから目を背ける。 「思い出作り、ってやつね」 背けながらも肯定はしておく。別に、遊びたくない訳ではない。まあ、この島で出来る遊びなんて数少ないのだが。 「海行ってー、山行ってー、探検してー、バイクで走ってー、飲み会やってー」 憲次は既に自分の世界で、夏休みの計画に胸を踊らせている様子だ。
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