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「わっ」
間一髪で、飛んできたボールをかわす私。大笑いを続ける私に憲次は頬を膨らませていた。なんだその顔、可愛いぞ。
「その顔3歳児みたいで可愛いぞ~」
私は憲次を茶化し続ける。憲次は顔を若干赤くさせながら、
「うっせー馬鹿!お前そんなだからもてねえんだよ!」
まるで小中学生のようなふざけたやりとり。これが私たちの日常だ。私は思いっきりブサイクな顔を作るとあっかんべー、と舌を出す。
「大きなお世話だ!興味ねえ!」
そう叫んだ頃には、私のへん顔に憲次が大笑いしていた。
「まじ、ひっでえーーーー」
腹を抱えて笑う憲次に、私も思わず吹き出した。
こんなんだから、咲子に嫌われるんだよなー、ただの友達だって言ったって、聞きやしない、恋する乙女の怖いこと。
憲次は身長があり、顔も平均以上に整っているため、他の女子からも人気がある。
そんな憲次だが、この性格のうえ幼い頃から付き合って来たので恋愛感情の一つも抱いた事がなかった。
私も高校入りたての頃は恋の一つ二つあった気がするけど、気がつけばこんな風にわいわいやってる方が楽しいし、人と関わるのすら面倒くさいと思ってしまう時だってある。ああ、恋したのなんて、いつだっけ?
夏の蒸した体育館に、一筋の風、恋なんて無くても、光に満ちた季節はもう始まっているんだ。
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