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予定時刻から10分が過ぎても、バスのくる気配はなかった。いつも通りの事だ。
その間に夕飯の買い出しか子連れの女性や年配の、自分の母親と同世代くらいの女性たちが頻繁にスーパーの出入り口を通り抜ける。
見知った顔になかなか出くわさないのは、中途半端な人口の多さのせいだろう。
そんな見ず知らずを横目に、携帯電話を開く。時刻は18時と少し。特にメールが来ているわけでも無いのですぐに閉じると、私は改めて目の前に広がる景色を眺めた。
夕暮れ時の西の空は七色に染まっている。目の前にそびえる山は、夏の緑が水を浴びて、更に生き生きと輝いていた。東からは夜が来る。ぽつりぽつりと輝く星は、日の光に負けじと存在感をあらわにしていた。
遠くに見える海は、赤に染まっているが、次期に黒く深い色を湛えるのだろう。
どの方角へ向かってもいずれその海へ辿り着く、ここは海に囲まれた小さな離島だ。
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