第1章

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様々な効果音や音楽、鉄球が激しくぶつかる音が入り交じり飛び交っている。 この騒がしい環境に自ら飛び込む日本人はけして少なくはない。 埼玉県内のパチンコ店『ミリオン』 都道府県に一店舗ずつ展開しているパチンコチェーン店だ。 泣く者、笑う者。 人生の縮図がそこにあった。 そして、その中にあわれな男がいた。 頼む!お願いします! 最後の1000円です! お願いだから、当ってくれ! この男、佐伯孝志は今年19歳になるガソリンスタンド店員。 彼がパチンコにハマり出して三ヵ月が経つ きっかけは単純なものだった。 彼が好んだキャラクターがパチンコになった。 ただそれだけの事だった。 三ヵ月程前…。 好きなキャラクターのパチンコがどんな物か、パチンコ店『ミリオン』に初めて入店しそのパチンコ台を発見する。 空いている席に着き見よう見まねで打ってみた。 あっと言う間に3000円ほど消費してしまい後悔の念に囚われる。 ここでやめて置けば彼の人生はごく平凡なものに終わっただろう。 だが彼はポケットから財布を取り出し中身を確認した。 あと6000円ある。 好きなキャラクターのパチンコだし、後1000円くらいはいいだろう。 彼は財布から1000円取り出すとパチンコ台の横に備え付けてある玉貸し機に挿入した。 スルスルと1000円札を飲み込んだ玉貸し機はパチンコ台に250発の銀玉を送り込む これが無くなったら帰ろう。 彼は心に決めた。 だが、帰れなかった。 100発ほど空しく消化した頃だった。 派手な予告(大当りが出そうな時に起る演出)が、心拍数を上げさせ、4のリーチ状態になった。 通常リーチからスーパーリーチに発展し興奮状態はさらに上がった。 当たるわけが無いと自分に言い聞かせたものの、現実の目の前では長い演出が続いている。 パチンコ台に付いている電飾がきらびやかに輝き正面の液晶モニターが眩しく光を放った後に4の数字が写し出された。 当った。 大当りだ。 一種の陶酔が彼の身体を支配する。 正面モニターは昇格チャンスに切り替わり4の通常当たりが5の確変(次回の当たる確率が非常に高くなる)に変わりボーナスラウンドが始まった。 パチンコ台は大量の玉を吐き出した。
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