第1章

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《下皿が満タンです。玉を抜いて下さい……。》 パチンコ台に使用されているキャラクターの音声が流れ出した。 慌てて下皿を開放するレバーを操作してドル箱に玉を流し込む。 ジャラジャラと何とも言えぬ心地よい雑音と振動を肌で感じた。 ボーナスラウンド終了後ドル箱は銀玉で満タンとなり確変モードへと移行したが彼は確変の意味を全く理解して無かった。 4000円で当った! 俺って運がいい! 初めての経験に気分は高揚し数分前の後悔の念は何処かに消えていた。 パチンコ台正面液晶モニターからまた予告演出が流れ出すそしてリーチ状態に 確変状態なのでこれは当たると確信できるのだが、確変の意味を理解していない彼にとって普通のリーチ画面にしか見えなかった。 こんなにすぐ当たる筈が無い!はずれるに決まってる! 一件ネガティブなイメージだが、当たりを期待してはずれるよりは最初から期待しないほうがダメージは少ないと言う考えのもとでの思考。 でもどこかで期待はしている。 たとえそれが無意識だとしても 2回目の大当りも確変数字だった。 彼にとっては予期せぬ出来事、自然に顔がほころぶがドル箱はすでに満タン慌てて辺りを見回すと店員が箱を変えている姿が目に止まった。 声を掛けるがこの騒音の中聞こえるわけもない。 どうしようと不安に駆られたが他の客がパチンコ台の上の方に手をやっている姿が見えた。 それに応える様に店員が駆け付ける。 彼もそれに習ってパチンコ台の上を見た。 呼出しボタンを見つけた。 すぐさまそれを押してみると店員が駆け付け「おめでとうございます!」と言う言葉と共に空箱を手渡し、満タンのドル箱を座席の後ろ側に移動してくれた。 箱の移動までやってくれるんだ等と感心している内に手渡されたドル箱は満タンになっていた。 大体の感じは掴めた彼は玉がいっぱいになっても慌てることもなく興奮と悦楽に身を任せた。 数時間が経ち気が付いてみるとドル箱は10箱を超えていた。 立ち仕事の彼は座り疲れを起こし少々腰が痛くなっていた。 パチンコ台も通常のモードに戻り、当たる気配が全くしない。 これで終りかなと感じた彼は呼出しボタンに手をやり店員を呼出した。
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