すれちがい

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今日も電話来ないのかな…。 アパートの電話番号だって、伝えてあるのに…。 そりゃあさ、あたしが携帯をお味噌汁の鍋に落としたのが悪いんだけどさ…。 そのために、不携帯だから余計心配だよ。 一人暮らしってお金ないし、修理に出したら日にちかかるって言われたし…。 慣れない仕事でストレスたまるし…。 あたしは、お風呂上がりの濡れた髪を拭きながら、部屋に飾ってある智君の写真を見た。 彼氏の智君とは、只今遠距離恋愛進行中。 就職してもう半年。 仕事の関係で、ただでさえ、あたしから電話できないんだ。 ねぇ、智君…もう2週間も声聞いてないんだよ…。 わかってるのかなぁ…。 声…聞きたいよ…。 最近は、ベッドに入るとすごく心細くなる。 『倉本さん、これ、コピーお願いね』 『あっ、はーい』 上司に頼まれた雑用をするのが、あたしの今の仕事。 あーぁ、仕事やる気しないなぁ…。 なんて思いながら、あたしはコピー機の前で、書類を確認し操作する。 『……れ?あれ?…白紙…?』 あたしは、慌ててコピー機を止めた。 『どうかしたのか?美緒ちゃん』 『あっ、高野さん!これ、調子悪いみたいなんです!』 『ん?どれどれ?』 高野さんは、同じ部署の優しい上司で、よく、あたしは面倒をかけてしまっている。 『美緒ちゃん、これ、原稿反対だよ…?』 『……………………』 かぁぁぁぁぁぁ……。 あたしったら、また、やっちゃった。 『す、すいません…』 あたしは、高野さんに平謝り状態。 『いいよ。慌てないで…ゆっくりやれば』 『は、はい…』 半泣きのあたしに、高野さんは優しく聞いた。 『美緒ちゃん、どうかしたのか?』 『…べ、別に何でもないですよ』 あたしは、慌てて取り繕う。 『そう?ならいいんだけど…』 『はい!あっ、これ、残りやっちゃいますね』 あたしは、コピーを続け始める。 これ以上、迷惑はかけられないよ。 ただでさえ、ドジなのに迷惑ばかりかけっぱなしだし、高野さん優しいから、怒んないで見守ってくれる。 でも、せっかく憧れの仕事につく事ができたんだもん。 頑張らなくちゃ。 しっかりしろ!美緒! あたしは、不安に潰されそうな心に気合いを入れた…。
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