愛の戦士イシカワさん

愛の戦士イシカワさん－１

イシカワさんは、カエル似のとぼけた顔した本屋の店員さん。声が異様ーーーーにっ、高いのでおじさんかおばさんか一瞬迷います。
が…多分…お…

「きゃーっ！！」
店内に響くお客さまのおたけび。
売場から瞬時に消えるイシカワさんの巨体。

青いエプロンが、ひらぁーり、ひるがえる。

｢わぉーん、わんわんっ！」野良わんこ(中型犬、痩せぎす)が、店内に入りこんでた！それも今まさに、お客さまのわんこ(マルチーズ)に、飛び掛かろうとしている。

イシカワさん、走る走る。走る走る。
階段降りて。と。

また走る走る走る。

福々ほっぺが、ぷるんぷるんに揺れる！

糸のように細い目は、いつもにっこり幸せ顔に見える。

イシカワさんの顔の作りは“接客業仕様”
でも必死！必死顔なの！汗だくなのっ！
汗はジャスミンのかほりなのっ！！

野良わんこを見つけると、マッハでさくっ！と馬乗りになり、耳元でなにかを囁くイシカワさん。

……………

途端にわるものから→いくじなしに豹変する野良わんこ。
「きゃうーん！きゃんきゃん！」
野良わんこは、しっぽをまきまき。♪いーとーまきまき、ひいーて、ひいーて、トントントン♪ と退散した。

イシカワさん…？ いったいなにしたの？

あっ！お客さまだ！！ 本の会計を待ってるよっ！

瞬時にレジカウンターにターンバック！

超身軽でかろやかで無駄のない動きだ。

「いらっしゃいませ！大変お待たせしましたぁ！こちらの書籍にカバーはおかけしますかぁ！はいっ！かしこまりましたぁ」

にっこり幸せ顔。

お客さまを守り、本を守り、文学の世界を届ける愛の戦士イシカワさん！

予定調和のように、同僚はなぁんも驚いてないぞっ！

なにか変だぞ、この本屋。不思議空間かも…。