あの人の手に触れる距離まで…

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言葉と声に耳を疑い、我を取り戻す頃には涼子の姿は人込みに掻き消されていた。 怨みや妬みが僅かに介在しつつも救済を乞う澄み渡る声。複雑な感情を一辺にしょい込ませた言葉。 唖然としていると祥子が直人の肩に手をのせる。 祥子の目は潤んでいた。 「…何か言われたの?」 直人は首を振って言った。 「何も。」 何もわからない。
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