あの人の手に触れる距離まで…

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「言っとくけど、お前が考える以上に周りはお節介なんだぞ?」 直人は舌打ちをした。恥じらいと嬉しさが混じった複雑な感情表現が言葉に漏れる。 「分かったよ。日曜な。」 由香里の表情に天使の梯が掛かる。 「遅れたら、三回廻ってお手。」 誰がするか…。 日曜はさぞや人が込むだろうと思った。由香里達の選んだプレフィールドを考えれば自ずと長蛇の列が頭に浮かぶ。 遅刻厳禁、罰ゲーム込みの為10分程早く駅前に着いた。 想像通り、駅前には本日の予定を頭に詰まらせた人の群れが構内に入ろうとしていた。 「あ、なんだぁ来てるや。」 直人の前にひょっこり姿を現したのは結だった。 「悪いか。」 「罰ゲーム見られないのが…ね。」 と結はちょこんと直人の隣に並ぶ。 「三回廻る位ならいいけど、お手まではなぁ。」 すると結は吹き出す。 「なんだよ、気持ち悪い。」 「だって…んこずわりして三回だよ?」 舌を出しハッハッと犬のまね事。 「想像しただけでこっちが気持ち悪い。」 「犬だったら…」 「?」 「…なんでもない。」 犬になった所で何も変わらない。鎖に繋がれた一生なら犬も人も同等だ。 大体飼い主を選べないのだ。それすら人と犬は同等。 「あ、きたきた。」 ロータリーを右から回る集団に結は手を振った。連中は直人を見るなり落胆したが、すぐに手を振り返してくる。 「あいつらお前と同じ趣味してんな。」 「友達思いなの。」 「寄ってたかってか?」 「一人だけ乗り遅れたら気分悪いじゃん。」 「乗りたくないって言ってもか?」 「乗らず嫌いなだけだもん。」 言葉を投げあっていると弘也達が寄って来た。 「なんだ、一番乗りはお前?」 残念そうに言うものの、顔はにやけている。 「しょうがないよ。直ちゃんは本気だすとちゃんと結果出すんだもん。」 「らしいといえばらしい。」 挨拶にしては上等だ。 「で?何すんだよ?」 心の皮一枚でかわし尋ねる。すると由香里がトートバックからパンフレットを取り出し、直人の眼前に突き付ける。 「ここ。」 避けるように後退し見てみると国立公園の花畑だった。 「気持ち良いよぉ。広場なんてうちらの校庭なんかとは…。」 「あぁあぁ分かった、分かったよ。」 「乗り気じゃないね。」 涼子の端的な言葉に返せない。
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