あの人の手に触れる距離まで…

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「あのね…。」 最後尾の車両に乗り込むと涼子が口を開いた。 「私、如月君に隠し事してた。」 「そう。」 「昔、一度だけ会った事があるの。貴方と。」 「そう。」 ドアが閉まる。動き出した電車は時を駆け登るように走る。 「もしも…。」 涼子の握力は意を決したように強くなる。 「…。」 涼子の口が滑らかに飛んだ。直人の瞳孔はひんむき、涼子の口元はさりげなく笑った。 「信じる?」 「…。」 電車はとめどなく進む。 時間と記憶と紛う感情を乗せ。
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