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* 額のキスは
* 友情の証
君が俺を嫌いでも それでも………
短編小説 make SAYA
> きっかけは、ティルの部屋にあった一冊の本。
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> 暇つぶしにパラパラとめくっていると、あるページに目が止まった。
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> ――キスの、意味?
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> キスに意味なんかあるのかと、妙に興味をそそられる。そう多くない文章に目を通せば、成る程と納得の出来る意味ばかりだった。
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> ――手の甲が忠誠とかは何と無く想像出来たけど。
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> 本から顔を上げれば、相変わらず机に向かって勉強しているティルの背中が見える。もう一度ページに目を落としてから、本を閉じて床に置いた。
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> 立ち上がってふらふらとティルの後ろに立てば、気が付いたらしいティルが目線を手元に向けたまま声をかけてくる。
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>「レイン? どしたの?」
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>「ティル、ちょっとこっち向いて」
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>「ええ~、俺今勉強中……」
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>「ちょっとで良いから」
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>「もー、ほんと何なのよ」
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> 少し苦笑しながらティルが俺を見上げる。あ、俺ティルを見下ろすの初めてかもしれない。
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> 唐突にそんなことを思って、それから。
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> 綺麗な白髪に隠されたティルの額に、髪の上から唇で触れた。
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> 顔を離して再び見下ろしたティルの顔からは跡形もなく表情が消えていて。でもそれは、瞬きをする間に何時ものティルに戻っていた。
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>「……ねえレイン、熱でもあるの?」
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> 柔らかい表情で心配するように声を上げるティル。
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> その姿が知識としてでしか知らないピエロと重なるのは、なんでだろう。
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>「別に、何と無く」
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> ――ティル、お前が俺を殺したい程嫌ってるのは分かってる。
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> でも、さ。
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> 俺はティルのこと嫌ってなんかないから。
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> いくら嫌われようが、俺はティルのこと、嫌いなんかじゃ、ないから。
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> しなくても良い心配しちゃったじゃないと笑うティルは確かにそこにいるのに、なんだか遠く感じられて。
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> 胸に走った切ない思いに、俺はそっと目を閉じた。
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>
> 額へのキスは友情
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