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僕は彼女に歩み寄る。
やっぱり、唯之内だ。
「大丈夫か、唯之内?」
俯いた顔から血が流れていた。
ほっぺったに一筋の切傷が出来ていた。
「…大丈夫、じゃねぇよな」
僕はハンカチを取り出し、傷口に当てる。
その時、自分のやっていることのやばさに気が付く。
お、俺。
何やってんだ!?
傷口にハンカチを当てる、なんてドラマみたいなシチュエーション。
それも女の子に…
やべぇ。
ちょー恥ずかしいぞ…
唯之内は俯いたまま。
全く顔が見えない。
唯之内は怒ってんのか?
もしかしてウザがってる?
だとしたら、相当、今、俺、気持ち悪いやつだ…
でも。
空はそんなこと思っていなかった。
唯之内はゆっくり顔を上げた。
その瞳に。
僕はそれに吸い込まれた。
そこには宇宙が広がっていて。
精神世界が広がっていて。
魂の使者が見えた。
「大丈夫だよ、ありがとう」
その透き通った白い肌、血筋が通ってないんじゃないかってくらい。
泥んこまみれのブレザーがイジメの度合いを物語っている。
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