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そして彼女は微笑んでいた。
僕は、ウザがられてなくて、とにかく良かったな、としか思っていなかった。
でも。
よく考えてみたら。
分かることだ。
さっきまであんなにイジメられていたのに。
普通、笑えるだろうか。
イジメられた後の精神状態で笑えるだろうか。
他人にイジメられているところを目撃されて。
果たして笑えるだろうか?
それが、例え。
自分を助けてくれただけの些細なことでも。
笑えるだろうか?
「ブレザー。泥んこまみれじゃないか」
「大丈夫だよ。脱いで帰るから」
脱いで帰るって…
季節は冬が終わった直後の春。
まだまだ気温は低い。
「セーター着てるから。心配、要らないよ」
だから。
んなこと言ったって。
「とりあえず来い。予備のブレザー、部室にあったと思うから」
「本当に大丈夫だから…」
と、唯之内が言うが。
俺は俺な以上。
唯之内の手を引いて部室に連れていった。
部室はもちろん誰もいない。
入口の椅子に彼女を座らせ、
「そこで待ってな。今、ブレザー持ってくっから」
またまたサッカー部には感謝だ。
五、六着ある予備のブレザー。
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