どんなときも

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だが。 どのブレザーも埃をを被っていていて、とても臭かった。 どれも唯之内に渡すにはいかないな… もう、一着あればいいのだが… ◆◆◆◆◆◆ 「わりぃ。予備のブレザー、コレしかなくてよ」 「これ、もしかして新品?」 「ん、まあ?」 「やっぱ悪いよ」 「いいんだよ。卒業した先輩が置いていった使ってないブレザーだから」 しぶしぶ、唯之内は着た。 僕の心臓はバクバクしていた。 何をしているんだろ。 俺って本当のバカだ。 ◆◆◆◆◆◆ 「今日はありがとう」 それが別れ際に唯之内が言った言葉。 ◆◆◆◆◆◆ 「本当のバカだな。お前」 「ウルせー」 とある地元のクリーニング屋。 店内は暖かい。 「んで、自分のブレザーを彼女に渡して…聞いてるだけでマジ笑える」 「笑わないでください」 「まあ、匂いだけなら業者に任せないでウチでやってやるよ。にしてもくせー、このブレザー」 「もういい加減うるせー!!」 実際のところ。 笑われる話だと思う。 埃まみれのブレザーを自分が着て、自分のブレザーを相手に渡す。 バカなやつだ俺って人間は。 そして。 すっかりテストの事を忘れていたことも。
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