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「絵美ーっ。帰ろー」
一組のホームルームが終わった後、あたしはすぐに傘を持って三組の教室に駆け込んだ。大好きな幼なじみと、いっしょに帰るために。
中には数人の生徒が残って何やら雑談をしていたけれど、あたしの視線が捉えたのは、窓際の一番前の席に座っている美少女。別に悪口を言うつもりはないけれど、他の子たちのことは「その他大勢」という風にしか見れなかった。
「ええ」
なんて端的な返事だろう。しかし、絵美は同時に嬉しそうな微笑を返してきた。
外からは、激しい雨音が連続的に聞こえてくる。今日は朝からずっと雨が降っているのだ。
まったく、梅雨の時期はいやになる。じめじめしていてむさ苦しいし、傘を差していても服は濡れてしまうし。
――でも、最近はそんなに嫌じゃなくなった。
それは、最愛の人といっしょに帰ることが出来るからに他ならないのだった。
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