雨の中で

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「ちょっと待ってね、すぐ片付けちゃうから」 絵美は、鞄に教科書やノートを詰め込んでいた。学校に置いていけばいいのに、絵美はわざわざ毎日持って帰っている。おそらく家で予習なり復習なりをしているのだろう。なんとも真面目なことだなぁ、とあたしは苦笑する。 ――でも。 そんな生真面目で律儀なところが絵美らしくて、あたしは大好きなのである。 絵美のふわふわした長髪ときれいな横顔を眺めながら、あたしは待った。大好きな人の顔は、見ているだけでも全然飽きない。 絵美は髪を揺らしながら、今度はプリント類を挟んだファイルをせっせと鞄に入れている。 その動作を見つめているだけで、あたしは惚れ惚れとした。あまりに手つきが優しく、そして上品だったから。 ……ああ。絵美ってば、何でこんなに可愛いんだろう。 つぶらな瞳、すらりとした鼻、妖艶に輝く唇、雪のように白い肌、繊細な指……。もはや「山吹絵美」を構成するすべての要素が、愛しく感じられた。
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