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「ごめんね、遥香。待ったよね?」
絵美に見惚れているうちに、結構な時間が経ってしまっていたようだった。絵美にそう声をかけられてから、あたしはやっと現実に帰還することが出来たのだ。
「い、いや。全然待ってないよ」
むしろ、もっと待っていたかったくらい。そして、もっと絵美を見ていたかった。
「そう? じゃあ、行こっか?」
顔を紅潮させつつ、絵美はゆっくり手を差し出した。それが「手、つなごっ」のサインであることは分かっているので、あたしは迷わずその手を掴んだ。
絵美はあたしよりも一回り背が低いから、当然上目遣いになる。それがなんとも言えない魅力を引き出していた。
絵美の手は、ほんのりと温もりを帯びていた。その体温があたしにまで伝播していくように感じる。
でも、体がここまで熱くなってしまうのはそれだけが要因ではないのかもしれない。
あたしの手で、絵美の慎ましい手をつつみこむ。離れないようにきゅっと握りしめ、「絵美」という存在を肌で肉感として確かめながら、あたしと絵美はゆっくりと歩きだした。
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