たった一試合のエース

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「(ここは力で抑える…)」 巽のサインに瀬能が大きく頷いて足を上げる。クイックモーションから投じられた球は城の内角に食い込む直球、それに城は手を出さずに見逃す。 ズバンッ! 「ストライクッ!」 審判の腕が上がる。 「(ぐっ…今のは…)」 見逃したのでは無く手が出なかった城…そして、中継ではアナウンサーがまた声を上げる。 151km…この試合2度目の数字がテレビにうつる。 続く2球目、先程と同じコースに直球。 ズバンッ! 「ストライクッ!」 やはり城のバットは動かない。 間髪を入れずに瀬能は3球目を投じる。 ズバンッ! 「ストライクッ!バッターアウトッ!」 寸分違わず同じコースに続けられた直球に、城はバットを動かすことも出来ずに打席に佇む。 3球続けての西京の5番打者の見逃し三振という異常な事態ににスタンドが静まり返る。 ただ…テレビのみが騒ぐ。 3球続けての150kmを超える直球…それも伸び上がる最高のキレを持った球は打者にスイングを許さない。 目の前での5番打者の三振に気を落とした6番野村、7番香月を共に5球、6球で連続三振に打ち取りマウンドを降りる。
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