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巽「(スライダー…しかないよな…)」
瀬能からの合図を受けた先ほどと同じ高速スライダー…
瀬能がゆっくりと振りかぶり腕を振るう。
先ほどと同じ外角への速い球に東條のバットが動く。
巽「(討った)」
手元での急激な真横への変化に対応出来るように意識を球に移す…しかし、真横に滑るはずのスライダーは滑らずにそのままの軌道を描く。
瀬・巽「(なっ!)」
失投…限界と言われた60球を遥かに上回る100球を越えた状況から、最も肘に負担のかかる高速スライダーの連投が瀬能の指先の感覚を微妙に狂わせる。ただそれだけのこと…しかし絶妙なバランスの上で成り立っていた瀬能の高速スライダーには絶大なことであった。それが瀬能のウイニングショットを乱れさせる。
そして、思い描く軌道を描いたボールを東條のバットが確実に捉える。
キィィィィィンッ!
鋭い音を残した打球は左中間に大きく伸びる。
瀬「入るなっ!」
振り返って打球を目で追った瀬能が思わず叫ぶ。
打球は瀬能の叫びが通じたのか、フェンス最上段に当たりグラウンドに跳ね返る。センターの陸がすぐに処理をして3塁に送球するが、東條は2塁ベース上で止まっていた。
2アウトから一気に得点圏にランナーを進める。
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