たった一試合のエース

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西京学園側のスタンドが沸く中、マウンド上では瀬能と巽が話す。 瀬「すまん…失投だ…」 謝罪の言葉を出す瀬能に対して巽は… 巽「そんなことはどうでもいい…肘…限界なんじゃないのか?」 巽は瀬能の肘が気にかかっていた。抜くタイプの球とは違いしっかりと指にかかった状態から変化しなかった高速スライダー…それが瀬能の肘の限界を告げているように巽には感じられた。 瀬「もう…100球も越えたしな…確かに疲れは出てきてる」 巽「違うっ!そういう意味じゃないっ!」 答えをはぐらかせる瀬能に巽が声を荒げる。 しかし、瀬能は頑として首を縦に振らない。ただ静かに巽の目を見る。 巽「瀬能……わかった…」 無言を貫く瀬能の意思を組んだ巽が頷く。 巽「城にはボール球中心で行くぞ…1塁は空いてるんだ、無理はしない…」 瀬「俺はサインに首は振らないよ…お前は俺を信頼して球を選ぶ、そして俺はお前を信頼して球を投げる」 事実、瀬能は一度も首を振っていなかった。巽のリードの通りに投げ続けている。 巽「あぁ、だから俺もお前を信頼してサインを出す。もう何も言わないからな…」 瀬「あぁ…」 巽が瀬能に背を向けて戻ろうとする途中、瀬能が後ろから呼び止める。 瀬「ありがとう…」 瀬能の言葉に巽は照れ臭そうに鼻で笑うと… 巽「気にすんな…」 そう一言残して守備に戻る。
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