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左打席に6番の野村に替わった代打、3年生の橋爪が打席の前で数度素振りをしてから入る。
左投手である瀬能に対してセオリーに反する左の代打…それは西京学園監督の代打の1番手であるという絶対の信頼によるものであった。
巽「(ここで来たか…)」
もちろん巽の頭の中にもこの橋爪のことは入っていた。
城の控えの捕手であり、かつ代打の1番手…四死球を含めれば代打成功率は実に7割に達する。ここぞと言うときの集中力がずば抜けた選手であった。
巽「(………)」
巽がノータイムでサインを出す。あたかも最初から考えていたかのような決断の早さである。そして、瀬能はしっかりとそれに頷く。
橋「(瀬能…まさかお前とまた対戦するとはな…)」
当然、瀬能と橋爪には面識があった。
しかし、同じ捕手でも城のように特に親しい…といった訳ではなく会えば話す。その程度の付き合いでしかなかった。
それでも、橋爪は西京学園内の誰よりも瀬能と対戦していた。捕手としてでは城に劣る橋爪はそれならばと日々打撃を磨きはじめた。それは素振りだけではなく、可能な限り打席に立つ。「チーム内で投球練習を見ればその打席には橋爪がいる」そう言われる程に貪欲に打席にたった。その結果として、瀬能の打席に立つことも多かったのである
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