たった一試合のエース

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瀬能の踏み出した足はいつもよりやや1塁側…クロスステップからぎりぎりまで体を開かないようにして腕を振るう。 橋「(クロスファイアッ…)」 橋爪の打撃の武器は目だある。投手のクセを見破り、かついつもと違う動きを見逃さない。故に反応の早さが生まれた。 外角いっぱいのクロスファイアを想定してしっかりと貯めて踏み込む。 橋「(なっ!)」 橋爪の読みに反して瀬能の放った球は内角…しかも踏み込んだ橋爪にぶつかる程に体に近いコース。 橋「(ちっ…)」 橋爪が慌てて膝を折るようにして上半身をのけ反らせる。 直後…瀬能の放った球が急激な角度で真横に滑る。 ズバンッ! 「ストライクッ!バッターアウトッ!」 審判の腕が高々と上がる。 瀬「っ!」 巽「よしっ!」 瀬能と巽が共に軽き拳を握ってベンチに走る。 橋爪の目の良さだけではなく、先程の高速スライダーの後の失投までもを利用してのインスラで橋爪にバットを振らせずに打ち取る。 橋「やられた…」 ベンチに戻る瀬能…いや巽を見て橋爪が思わず言葉を漏らす。 瀬能ではなく巽に打ち取られた…その気持ちで橋爪が染まり、8回の表の西京学園の攻撃を凌ぎ切る。
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