たった一試合のエース

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ベンチに戻る瀬能と打席に向かう甲斐がすれ違う。 甲「確かに受け取った…」 瀬「あぁ…任せた」 僅かな会話をかわす。 それだけで十分であった。 瀬能がベンチに戻ると高宮が出迎える。 高「よくやった…」 打ち取られた瀬能への称賛。高宮にはわかっていた。瀬能の打席の意図が…そしてそれはチームのみんなが同じであった。 ベンチの視線の全てを集める打席には甲斐…1アウトランナーは無し。決して注目を集めるような場面ではないはずの打席に異様な数の視線が集まる。 そんな中、甲斐ともう一人…捕手の城だけは冷静であった。 城「(今ので…球筋を見られたか…)」 既に8回…このままでは甲斐に打席が回るのは一度、だからこそ瀬能は自分打席を棄てて森の直球の球筋を甲斐に見せた。そして、最も信頼のおける打者に自分の打席を繋いだのである。 その思いに甲斐は応えるために打席にいる。 城「(ちっ…初球は外して変化球で勝負だな…)」 城が決断をしてサインを森に送る。
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