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「仁美ぃ」
「な、なに?」
じっと見つめていると、次第に仁美が慌てだした。
「帰り、アイスね」
「え~?ごめんって!許して、百合様ぁ」
顔の前で両手を合わせて、上目遣いであたしを見る仁美。
…うん、これはモテるよ。
ただ残念ながらあたしは女。
性格は女っぽくないけど……
「だーめ!帰り楽しみにしとくね、仁美♪」
「え~……あっ」
仁美の視線と声につられて、あたしも視線を前に移すと、担任がすでに教室に入ってきていた。
あたしは椅子に座り直して、前を向いた。
担任の教師は、簡単に出席をとると、簡単な連絡事項を話し始めた。
窓際の席のあたしは、教室の前から聞こえるだみ声を聞き流して、ふわふわと散っていく桜の花びらを、目で追っていた。
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