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「今週の金曜日から日曜日まで行かないといけなくて」
有明はそう言いながらマグカップに煎れたてのコーヒーを注いでいた。
カップからふんわりと漂うコーヒーの香り。
砂糖もミルクも入っているのに、飲んだ後味がいつもより苦く感じるのは、淋しさのせいだろうか。
「お仕事なら…仕方ないですよね」
そう頭では納得しているけれど、瑞穂の中には「一日中一緒にいられるはずだったのに」としょげた自分がいる。
ここ最近の有明は忙しく、仕事の帰りも遅い日が続いていた。
そのため平日でもろくに会えない日がほとんど。
それでも週末になれば一緒にいられると思い我慢してきたのに……
「こんな風に考えるのはきっと自分がまだ学生だからだ」などと思った瑞穂はますます落ち込んでしまった。
瑞穂のそんな様子をいち早く察した有明が俯く瑞穂を優しく抱き寄せる。
「ごめんね晴。でも日曜日の夕方には帰ってくるから、夜どこか一緒にご飯食べに行こう?」
有明はそう言うとそっと瑞穂の頬にキスをした。
有明はやっぱり自分よりずっと大人だ。
こんな風に優しくされたら逆らえない。
瑞穂は俯いていた顔を上げると、コクンと頷いた。
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