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「お婆ちゃんは明るくて優しくて働き者で、私の憧れの人なんです。お婆ちゃんのような大人になって、いずれはお婆ちゃんの仕事を手伝うのが私の昔からの夢で…でも…」
穀保の話す声がだんだんと震えてくる。
「お婆ちゃんに何かあったら私…!」
穀保の頬に涙が伝ってぱたりと膝の上に落ちた。
そのあともぽろぽろと涙がこぼれてくる。
有明が泣いている穀保に声をかけようとした時、バタバタと走ってくる足音が聞こえた。
有明が足音のする方へ顔を向けると、廊下の奥から寺内と御蔵が走ってきた。
「有明先生!かれんちゃん!軍野さんは!?」
「寺内さん…」
穀保は声をかけてきた寺内と、その後ろで心配そうに顔を歪める御蔵を見た。
穀保が途切れ途切れに軍野さんがまだ治療中であることを話すと、寺内と御蔵も無言でベンチに腰をかけた。
カチ、コチ、とまた秒針の音だけが響く。
その後数分待っていると、診察室のドアがガチャリと音をたててゆっくりと開いた。
「先生!あの…祖母は…!?」
「それが…」
穀保が俯く医師を見て不安げに顔を歪める。
「お婆様ですが…」
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