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「いきなり呼び出してごめんなさいね」
軍野さんはにっこり笑って言った。
「私何年か前に喉を痛めてから食べ物を詰まらせやすくなってしまったの。なのに皆でわいわい騒いでいたものだから油断したのね。先生は命の恩人だわ」
「いえ、そんな…」
有明は今までとは違う軍野さんの雰囲気に恐縮した。
「あの、何かお話があると聞いたのですが」
「えぇそうなの。あ、でもその前にまずご挨拶をしないとね」
軍野さんは立ち上がると机の引き出しを開けて何かを探し始めた。
「軍野さん、邪魔してしまうといけないので僕は退室しますね」
「あら大丈夫よ、気にしないで寺内さん」
片付けを続けていた寺内がペコッと頭を下げた。
「あぁあったあった」
軍野さんは引き出しから何かを取り出すと、ソファーのところまで戻ってきて、立ったままそれを有明に差し出した。
「?」
「改めまして。わたくし、秋崎学院高校の理事長をしております、軍野あずさと申します」
「え!?」
驚いた有明は差し出された名刺と軍野さんの顔を見比べた。
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