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「一応肩書きとしてあるだけで、今実際に学院をまとめているのは、娘婿でかれんの父親の学院長なんですけどね」
「そうだったんですか…すみませんご挨拶が遅れてしまって」
「いいのよそれは。気にしないで。それでね先生、話というのは実は孫のかれんのことなのよ」
「え?私?」
祖母の話のたねが自分であることを知らなかったようで、穀保は驚いて目を丸くした。
「そうよかれん。あなたの将来について」
「将来?」
「そう。あのね先生、この秋崎学院高校は私の父が建てた学校が始まりで、私と娘婿と継いできたんだけど、次の代を引き継ぐ人間が実はまだいないのよ」
軍野さんはテーブルに置いてあったカップに用意してあった紅茶を注いだ。
「私の娘は看護師になるのが夢だったから、夢を絶つのは可哀相だしその時も諦めたけれど、娘がお付き合いしていた人が教師を目指している人だったから、結果的に娘婿に引き継いでもらったの。それがかれんの父親ね」
軍野さんはカップに入れた紅茶を有明と穀保にすすめると自分も一口飲んでカップを置いた。
「かれんも娘からの影響で介護の道を目指しているんだけど、学院のゆくすえも気にかけてくれているみたいでね。でも学問の道を選んだ人でなければ学院長としては難しいものがあるし…」
有明の心臓がだんだんと早鐘のように鳴り始める。
「有明先生は人柄や仕事に対する姿勢は申し分ないわ。そして何より教師として学問に携わり子供達と関わりを持っている。あなたのような人が学院を引き継いでくれたらどんなに安心か」
「ま、待って下さい…それはつまり…」
「孫のかれんと、結婚を前提にお付き合いしてくださらないかしら?」
「けっ…こん!?」
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