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「あの…電話したんですけど、雪人さん出なかったから勝手に来ちゃって…」
「晴」
「たまには…ケーキもいいかななんて思って買ってきたんですけど」
「晴ちゃんあのね」
「加津佐さんの分買い忘れちゃいました!ごめんなさいすぐ買いに」
「晴!」
有明が瑞穂の肩を掴んで強く名前を呼んだ。
その拍子に瑞穂の手からケーキの入った箱がするりと床に落ちる。
「逆玉って…何なんですか?」
「それは…」
「晴ちゃん違うんだよさっきのは」
「雪人さんは…その方が幸せなんですか?」
瑞穂は目にいっぱいの涙を溜めて有明を見上げた。
たじろぐ有明の手を振り切ると、瑞穂は走って部屋を出て行ってしまった。
有明の目の前でバタンと閉まる玄関のドア。
違うんだと言わなければ。誤解だと言わなければ。
ドアノブを回す手に力が入らない。
有明はもどかしくドアを開けて走って後を追ったが、俯く瑞穂を乗せたエレベーターのドアは有明を拒否するかのように目の前で閉まってしまった。
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