挨拶

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コンコン ドアを軽くノックする音が響いた。 きっと、邑咲だとかいう、女だろう。 「はい、どうぞ。」 びしょ濡れの服を脱ぎ捨て、扉に声を掛けるが、 「……………………………」 返事がない。 「鍵、開いてますよ?」 もう一度、声を掛けるが、やはり、無言のままだ。 イタズラしているのか? ゆっくりとドアに近づくと、 ギイッ ギィィィィ 不気味な高い音を立てて、扉がゆっくり開きだした。 「なっ!!!」 思わず声を上げてしまう。 だって、 そこには誰もいないから。 本当に誰もいないのか… それとも、勝手に開いたのか? それとも、誰かが……………… すっ っ!? な なななななんだ!? ひんやりとした冷気が、幽かに肌に触れた。 その直後。 パタパタ パタパタ 『お兄ちゃん?』 スリッパで走る音と、幼い少女の声。
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