32人が本棚に入れています
本棚に追加
コンコン
ドアを軽くノックする音が響いた。
きっと、邑咲だとかいう、女だろう。
「はい、どうぞ。」
びしょ濡れの服を脱ぎ捨て、扉に声を掛けるが、
「……………………………」
返事がない。
「鍵、開いてますよ?」
もう一度、声を掛けるが、やはり、無言のままだ。
イタズラしているのか?
ゆっくりとドアに近づくと、
ギイッ ギィィィィ
不気味な高い音を立てて、扉がゆっくり開きだした。
「なっ!!!」
思わず声を上げてしまう。
だって、
そこには誰もいないから。
本当に誰もいないのか…
それとも、勝手に開いたのか?
それとも、誰かが………………
すっ
っ!?
な なななななんだ!?
ひんやりとした冷気が、幽かに肌に触れた。
その直後。
パタパタ パタパタ
『お兄ちゃん?』
スリッパで走る音と、幼い少女の声。
最初のコメントを投稿しよう!