477人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、あの!!」
サクヤがその女性の肩を掴み、立ち止まらせた。
「なんだ?できるだけ止まりたくはないのだが」
それでも、一向に女性はまっすぐ前を向いたままだ。サクヤの方を向こうとはしない。
「説明して!!ここにアラガミがいるのはいいわ。けど、あなたは何なの?この施設の関係者かしら」
「ふむ、結論から言うと私は――」
「その人はここの関係者でもなければ人間でもないっ!!」
突然、ジャクが叫ぶ。
「おいおい、急にどうしたんだよジャク。失礼だろ命の恩人にさぁ」
「そうだ。その子の言う通りだぞ、失礼じゃあないか……」
「痛っ!」
女性が自分の肩を掴むサクヤの手を握り、爪がサクヤの皮膚に食い込む。
そして、ゆっくりと……後ろを振り向いた。
「なぁ、ジャク?」
その女性には顔がなかった。
いや、潰れていたのだ。血の滴る筋肉組織が目に見えてわかる。
砕けた頭蓋骨が頭皮からはみ出ている。
美しい藍色の髪は血の錆びを浮かべた色へと変わっていた。
『うきゃあああああっ!!』
コウタとアリサが腰を抜かし、ソーマは声なき悲鳴をあげた後、立ったまま気絶した。
「いやっ!!離して!!」
掴まれた手を振りほどこうとサクヤが必死になって手を上下させる。
最初のコメントを投稿しよう!