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ンパの家は中心部から一番遠い場所にあった。
彼の母親が大地が見える所が良いと言った為らしい。
「ンパも硝子の外は出られないと思うかい? 」
晶は訊いた。
「君は歴史の授業が苦手なのかい? ずっと教わっているじゃないか。家の人だって、たまには話をするだろう? 」
「知識としては解ってるけどね、疑っているんだよ 」
グランが晶を指差して言った。
「大昔に汚い空気を出し過ぎた上に大きな戦争が2回あって放射能やら細菌やらとかがいっぱいになったんだろ? 知ってるさ 」
「流石にその頃よりは太陽が近付いたらしいから、細菌とやらはいないだろうけど、放射能はまだ残ってるらしいよ 」
「でも僕等は先天的に放射能と細菌に抗体があった人間の子孫だろ? 」
「そうは言っても、その前の人類は腕と足は2本ずつで指は5本ずつで…… とか皆同じような身体の作りだったって歴史で習ったじゃないか 」
ンパは笑顔で晶にそう言った。
「だから何さ? 進化はするもんだろ? 」
晶はつまらなそうに言った。
「疑うならそこを疑えよ。これは進化じゃないよ。汚染による奇形だ 」
「奇形? 」
「そうさ。昔の人々だって猿から進化したとか何とかあるけど、本数なんかは変わらないだろ? 減る事はあっても増えやしない。尻尾は取れても腕や足や指が増えやしない 」
「だって抗体…… 」
晶は悲しそうな声で言った。
「抗体はあったんだろう。死ななかったんだから。それだけさ。地球本部の人間を見た事ないのかい? 」
ンパはそう言いながら1本の足をコツコツ鳴らしながら残りの2本を組んだ。
「見れやしないだろ? 本部のドームは別にあるし、セキュリティシステムが凄くて近付く事すら出来ないよ 」
「でもシモンの爺ちゃんは入ったじゃないか 」
ンパはグランの意見を制した。
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